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2022年(令和4年)1月1日より、電子帳簿保存法が改正されました。特にネットショップ運営などの「電子取引」に関係のある改正です。副業のネットショップや、フリマアプリ販売などでも対応は必要なのでしょうか?
この記事では、電子帳簿保存法に合わせてどのような対応が必要なのか、把握しておくべき「改正ポイントの基本」と「ネットショップの場合に何をすべきか」について解説しています。根拠となる国税庁の資料へのリンクもあるので参考にしてください。
電子帳簿保存法について よくある疑問(ネットショップ運営の場合)
電子帳簿保存法について、よくある5つの疑問と回答を以下にまとめました。特に副業や本業で「ネットショップ運営」をしている人に関係する部分についてです。
そもそも電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法は、帳簿を電子データで保存する方法について定めた法律です。
例えばネットショップの場合、以下の書類などをどのように保存するかに関係します。
- ネットショップの売上明細
- 商品の仕入れ明細・領収書
- レンタルサーバー代
- 仕訳帳などの会計帳簿
これらは確定申告などで「提出」はしませんが、「保存」しておく必要がある書類です。個人や副業のネットショップでも、規模が大きい場合や「事業所得」で申告するなら保存義務があります。どのような場合に義務があるかについて詳しくはこちら。
このような「保存すべき書類」を電子的に保存する場合、どのような形で保存するべきかを定めているのが電子帳簿保存法です。
法律そのものは1998年からありますが、時代の変化とともに改正されてきました。
令和4年の改正ポイントは何?
電子帳簿保存法は、令和4年(2022年)の1月1日より改正されました。ネットショップ運営で注意すべきなのは以下の改正ポイントです。
- 電子取引の明細について「電子データでの保存」が義務化された
- 「タイムスタンプ要件」と「検索要件」が緩和された
- 「事前承認」が不要になった
ネットショップ運営に大きく関係するのは、電子取引の明細を「電子データで保存」することが義務になったという点。
「タイムスタンプ要件」と「検索要件」については、「そもそもタイムスタンプとか検索とか、何も考えてなった」というネットショップは要チェックです。
また今までは「事前承認」を受けないと電子データでの保存ができませんでしたが、それが不要になったので、機材やシステムの準備ができたらすぐに電子保存に対応できるようになりました。
改正ポイントについて詳しくはこちら。
ネットショップはどんな対応が必要?
副業ネットショップや、フリマアプリ販売など、小規模の場合は「雑所得」になることがあり、その場合は特に対応は不要です。
そもそも雑所得は「明細や帳簿の作成が不要」だからです。ただし売上が大きいと対応が必要になることがあります。詳しくはこちら。
明細を保存する必要がある場合、改正によって「電子データで受け取った明細は、電子データのまま保存する」というのが必須になりました。
そのためネットショップの場合、メールやWebの明細・領収書・納品書などを紙に印刷して保存するのではなく、PDFなどの電子データで保存するという対応が必要です。
さらに「タイムスタンプを付与する」もしくは「訂正・削除の履歴を残せるシステム」で保存するという対応もしなければなりません。
具体的な対策について詳しくはこちら。
過去の帳簿・明細も電子化・スキャンしなければいけない?
法律の「改正前」の帳簿や明細については、何か対応が必要なのでしょうか。
例えば電子取引の領収書などを、改正前は紙に印刷して保存していた場合に、「過去分もスキャンして電子データ化しなきゃいけないのか?」という疑問です。
簡単に言うと「改正前のルールに沿っていれば対応は不要」です。基本的に「改正前の帳簿・明細は、改正前のルール」で保存することになっています。紙に印刷しての保存も、改正前のルールに沿っていれば問題ありません。この点は次の疑問とも関係します。
過去分の事前承認も必要なくなった?
これまで事前承認を受けずに帳簿や領収書などを電子データで保存していた場合、改正前の過去分についても「もう承認を受ける必要ななくなった」ということなのでしょうか?
改正前に、本来なら必要な事前承認の手続きをしてこなかった場合、「過去分についても事前承認をしなくてよくなった」というわけではありません。
国税庁のサイトには、以下のようにあります。
令和4年1月1日前に行った電子取引の取引情報については、改正後の保存要件により保存することは認められません。
引用元:電子帳簿保存法一問一答「問10」
電子帳簿保存法の「改正内容」をネットショップ運営者向けに解説!
では具体的に、どのような点が改正されたのでしょうか。国税庁の公開している解説資料はこちら。
上記の資料をもとに、以下に分かりやすく解説します。ネットショップの場合に何が関係するのかも解説しているので参考にしてください。
1. 電子取引の明細について「電子データでの保存」が義務化された
改正点の一つは、ネット通販などの「電子取引」について、紙ではなく電子データでの保存が「義務」になったという点です。
ここでいう「電子取引」とは、領収書や取引明細を「電子データ」でやり取りすること。ネットでの「購入」「販売」の両方が含まれます。
ネットショップの場合、売上の明細や仕入れの領収書など、紙ではなくメールやWebなどの電子データだけの場合が多く、ほとんどが「電子取引」に該当するでしょう。
今まではメールやWebの明細を「紙に印刷して保存する」という方法がありましたが、それがダメになったということです。法律の根拠は以下のとおり。
第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律第二十五号)|e-GOV 法令検索
しかも、単に「電子データで保存さえすればOK」というわけでなく、次の項目も押さえてルールを守って保存する必要があります。
2. 「タイムスタンプ要件」が緩和された
もう一つの改正点は「ルールの緩和」です。
以前は電子データで保存した領収書や帳簿について「タイムスタンプ」を付与するための厳しいルールがありましたが、その一部が緩和され、手続きが楽になりました。主な緩和ポイントは以下の2点です。
- タイムスタンプ付与までの「期限」が延長された
- タイムスタンプを「付与せずに済む方法」ができた
受け取った領収書に、期限が「最長約2カ月」に延長されました。以前は「3営業日以内」などの厳しいルールでしたが、それが緩和されたということです。
さらに「電磁的記録について訂正又は削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認することができるクラウド等」を利用すれば、そもそもタイムスタンプを付与しなくてもよくなったという点も、緩和されたポイント。具体的にはクラウド型の会計ソフトなどが該当します。
タイムスタンプとは、記録された時刻に「そのデータが存在していたこと」と、「その後に改ざんされなかったこと」を証明する技術のこと。
電子帳簿保存法に対応するには、紙の書類をスキャンした場合だけでなく、EメールをPDF化した場合や、最初からPDFとして受け取った領収書なども同様に、タイムスタンプを付与しなければなりません。
タイムスタンプは基本的に時刻認証局(TSA)によって発行されます。「タイムスタンプ用のシステム」を使って付与するのが一般的です。
タイムスタンプ用のシステムは有料で、例えば「アマノスタンプサービス」や「セイコータイムスタンプサービス」などがあります。
3. 「検索要件」が緩和された
緩和されたもう一つのポイントは「検索要件」、つまり帳簿や領収書のデータを「検索できる状態にするためのルール」についてです。
「検索できる状態」とはつまり、日付や取引先などの文字をパソコンなどに入力して検索すれば、該当する帳簿や領収書のデータをすぐに参照できるようにしておくということ。
改正ポイントは以下の2点です。
- 検索要件の項目が減り、「日付・取引金額・取引先」の3つに限定された
- 「検索要件を満たさずに済む方法」が設定された
検索できる項目として、以前は「取引年月日、勘定科目、取引金額その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目」として多くの項目が必要でした。それが「日付・取引金額・取引先」の3つに減って、管理がしやすくなったわけです。緩和されたとはいえ、基本的には「検索できる状態」にすべきという点は変わりません。ネットショップの明細などを、これまで「適当に保存してきた」という場合は、できるだけ早く検索要件を満たすよう対応する必要があります。
さらに小規模な事業者については、帳簿や領収書データの「ダウンロードの求め」に応じられるようにしておくなら、そもそも検索要件を満たす必要はありません。「小規模な事業者」の基準は、前々年の売上が1,000万円以下であることです。
ただし具体的にどこから・どのようにダウンロードすることを意味するのか、2022年4月現在の時点では詳しいことが説明されていません。以下の資料で、大まかな説明をしているだけです。
いずれにしても、データ提出を求められたらすぐに応じられるようにするために、検索できるようにしておくことは重要です。ネットショップの年間売上が1,000万円以下でも、基本的には検索要件を確保しておくことをおすすめします。
4. 「事前承認」が不要になった
今回の改正により、事前承認をしなくても帳簿や領収書を「電子データとして保存してOK」になりました。
これまで帳簿を紙ではなく電子データで保存するには、税務署に必要な書類を提出して「事前承認」を受ける必要がありました。これが不要になり、帳簿を電子的に保存するためのハードルが下がったというわけです。
前述のとおり過去分は対象外ですが、令和4年1月1日以降の帳簿や領収書については、承認を受けなくても電子データとして保存できます。
ネットショップ運営者の場合、具体的に何をすればよいか
ではネットショップの場合、電子帳簿保存法の改正に合わせてどんな対応をする必要があるのでしょうか?主な対応は2つです。その前に「そもそも対応不要の場合がある」という点について解説します。
副業ネットショップは対応不要のケースもある
副業ネットショップの場合、そもそも帳簿や明細の保存が不要のケースもあるため、電子帳簿保存法の改正について特に対応しなくてもよい場合があります。
副業のネットショップは「雑所得」に該当することが多いためです。雑所得なら帳簿の作成や明細の保存が義務ではないため、電子帳簿保存法が「そもそも関係ない」ということになります。
ただし2年前のネットショップ収入(売上)が300万円を超える場合には、雑所得でも明細や領収書などの「現金預金取引等関係書類」を保存しなければならないため、電子帳簿保存法に合わせた対応が必要です。
電子的に作成した帳簿はそのまま電子データで保存する
本業ネットショップなど「事業所得」として申告する場合には「帳簿」を作成する必要があります。
ここでいう帳簿とは、仕訳帳などの会計帳簿のことです。ネットショップの確定申告で作成・保管する必要のある書類について詳しくは、以下の記事を参照してください。
ネットショップの確定申告は、売上いくらから必要?やり方も詳しく解説エクセルや会計ソフトなどを使って「パソコンを使って電子的に作った帳簿」は、そのまま電子的に保存する必要があります。
電子帳簿保存法対応の会計ソフトで作っていれば、帳簿については特に何もしなくても、通常はそのままでOKです。
電子取引の明細や領収書を電子データで保存する
ネットショップで保存する必要のある明細や領収書としては、主に以下の3つが挙げられます。
- 「商品仕入れ」の領収書・納品書
- 「レンタルサーバー代」の支払い明細
- 「ネットショップ」の売上明細
いずれも電子的に取引が完結し、紙の明細などのやり取りしない場合には、PDFなどの電子データとして保存しなければなりません。
「レンタルサーバー代」や「商品仕入れ」の明細は、WebサイトからPDFの明細がダウンロードできることが多くあります。メールにPDFが添付されて送られてくることもあるでしょう。
「ネットショップの売上明細」については、PDFではなく「CSV」でしかダウンロードできないこともありますが、要件を満たしていればCSVでもOKです。データの要件を満たす方法について、次の項目から解説します。
ちなみに「PDFもCSVも無い!」という場合は、ブラウザの印刷機能を使うという方法もあります。詳しくはこちら。
単に電子データで保存するだけでなく、タイムスタンプの付与(真実性の要件)と、検索要件(可視性の要件)の2点を満たす必要があります。
要件を満たす方法は、主に以下の2パターンです。
方法1:タイムスタンプを付与+PCで検索できるようにする
一つの方法は、タイムスタンプを付与してPCなどに保存するパターンです。以下の手順で保存していきます。
- 明細データのタイムスタンプ申請
- 明細データのファイル名に必要な情報を入力してPCなどに保存
まずは「タイムスタンプ用のシステム」を利用して、データごとに申請し、タイムスタンプを付与してもらいます。
タイムスタンプの付与が終わったら「検索機能の確保」です。
パソコンに保存して、ファイル名に、検索要件として規定されている「日付・取引金額・取引先」の3つの情報を入れます。ネットショップの取引先とは、例えば購入者や仕入れ先などです。
ファイル名ではなくエクセルなどのソフトを使って検索できるようにしてもよいでしょう。エクセルで「日付・取引金額・取引先」の3つの情報が検索できるようにして、エクセル上に該当するファイルへのリンクを設置したり、ファイル名を記載したりなどの方法です。
データを保存しておかなければならない期間は「7年間」です。かなり長い期間なので、その間にデータが消失しないよう、バックアップを取るなどの対策をしておきましょう。
方法2:訂正・削除の履歴を残せて、検索もできるシステムで保存する
データの「訂正・削除の履歴を残せるシステム」で保存すれば、タイムスタンプを付与しなくてもOKです。
訂正・削除の履歴を残せるシステムはいくつかありますが、例えば主要な「クラウド型の会計ソフト」では、今回の改正に合わせて、その機能を用意してくれています。
クラウド型の会計ソフトでは「検索機能の確保」もできることが多く、一つのシステムで電子帳簿保存法に対応可能です。クラウド型なので、自分のパソコン内にも保存しておけば、バックアップとしても機能します。
クラウド型の会計ソフトについて詳しくはこちら。
PDFの明細が無い場合の対処法
経費や売上の明細を、PDFでダウンロードできない場合はどうすればよいのでしょうか。
BASEなどのネットショップ作成サービスでは売上明細や納品書をPDFでダウンロードできますが、フリマアプリなどはPDF出力に対応していないことがあります。ドメイン代など、経費の明細をPDF出力できないケースもあるでしょう。
そういう場合にどうすればよいのか、国税庁の資料に、いくつかの方法が挙げられています。アフィリエイト用におすすめなのは以下の2種類です。
引用元:電子帳簿保存法一問一答「問27」
- ウェブサイト上に表示されたHTMLデータを領収書の形式に変換(PDF等)し、サーバ等に保存する
- ウェブサイト上に表示される領収書をスクリーンショットし、サーバ等に保存する
つまり「PDFに変換」と「スクリーンショット」という2つの方法です。この2つの方法それぞれについて、以下に詳しく解説します。
ブラウザの「印刷」機能を使ってPDFに変換する
一つはブラウザで明細画面を開いて、「PDFとして印刷する」という方法です。
PCの印刷機能は一般的に、「紙に印刷する」以外にも「PDFとして印刷する」(PDF出力する)機能があります。
例えばGoogle Chromeの場合は、右上の三点マークのメニューボタンから「印刷」をクリックし、送信先としてプリンタではなく「PDFに保存」を選択すると、表示されている画面をPDFに変換できます。
印刷といっても紙に印刷することはなく、そのままPDFとして出力されるわけです。この機能を使えば、「ブラウザに表示されたWebページ」をPDFに変換できます。
例えばネットショップの売り上げ明細画面など「PDFとして保存したいページ」を開き、PDFに変換すればいいわけです。
スクリーンショットで保存する
印刷がうまくできない場合、「スクリーンショットで保存する」という方法もあります。
ただし「整然とした形式及び明瞭な状態で」スクショする必要があることに注意が必要です。画像が荒くて文字が読めないとか、ページがバラバラで読みにくいなどのことがないようにする必要があります。
特にスクリーンショットの場合、「スクロールしないと見えない部分は保存できない」という問題がありますが、必要な情報が全部見えるように保存しなければいけません。
解決策として「Google Chromeのアドオン」を使うという手があります。例えば「Awesome screenshot(素晴らしいスクリーンショットとスクリーンレコーダー)」というアドオンを使うと、スクロールされて見える分を含めた全体をスクショしてPDF保存できます。
できるだけ楽に電子帳簿保存法に対応する方法
電子帳簿保存法に対応するには手間がかかるものです。特にネットショップは領収書などの数が膨大になりやすく、効率的に進めていかないと多くの時間がかかってしまいます。できるだけ楽に対応するにはどうすればよいのでしょうか。おすすめの方法を2つ紹介します。
方法1. クラウド型の会計ソフトを使う
クラウド型の会計ソフトなら、電子帳簿保存法への対応が簡単です。
会計ソフトで作成した帳簿の「訂正・削除の履歴」を残せるため、タイムスタンプを付与する必要がなくなります。
検索機能の確保をしながらPDFデータの保存をする機能もあり、電子帳簿保存法への対応に便利です。
ネットショップとデータ連携できる会計ソフトもあり、帳簿の作成や確定申告の手間を楽にできます。
具体的な会計ソフトは「freee」や「マネーフォワードクラウド」などです。詳しくは以下の記事を参照してください。
ネットショップ運営におすすめの会計ソフトは?選び方から解説方法2. 税理士にサポート・代行をお願いする
会計ソフトを使っても、帳簿の作成や保存には手間がかかります。「会計ソフトを操作する時間もない!」という場合は税理士に助けてもらうのも一つの手です。
依頼費用はかかりますが、大幅に手間を削減できます。
知り合いの税理士がいなければ、「無料の税理士紹介サービス」を使って探すのがおすすめです。
「ネットショップに詳しい税理士を紹介してください」などの要望に応えて、全国からぴったりの事務所を紹介してくれます。依頼する側は無料で利用できるので、税理士費用以外の手数料などが加算されることはありません。
具体的なサービスとしては「税理士紹介ドットコム」などが挙げられます。
ネットショップ・ECサイトに詳しい税理士の探し方。依頼のメリットと費用相場まとめ
ネットショップは「電子取引」が多いため、電子帳簿保存法の改正の影響が大きい分野です。
副業のネットショップなどの場合は関係ないこともありますが、売上が大きいと副業でも対応しなければなりません。
ネットショップは保存する明細や領収書が多いため、効率的に対応する工夫が必要です。できるだけ楽に対応するためには、「クラウド会計ソフト」や「税理士のサポート」が役立ちます。
会計ソフトや税理士は、確定申告を楽にするためにも重要です。ネットショップの確定申告について詳しくは以下の記事を参照してください。
ネットショップの確定申告は、売上いくらから必要?やり方も詳しく解説